クリエイター系の懇親会や勉強会や飲み会や芋煮会なんかに参加すると、よっぽど意図的に無作為なメンバー集めをしない限り、参加者の中にはある程度コミュニティが形成されているものである。
一応初めての人でもざっくばらんに分け隔てなくという建前はあるものの、やっぱりどうしても普段から喋り慣れている人と一緒に話したくなるもので、時間が経つにつれて数人のグループが複数、誰も知り合いのいない人たちが微妙な距離感を保ちながらぽつぽつと一人で酒と料理を口にする、なんて状況が往々にして発生する。
誰しも最初は後者なのだが、そこから一歩踏み出すには大きな勇気がいるものだ。ってか無理だ。よっぽどコミュニケーション能力に長けた人でないと、何のコネクションもない状態からズカズカとアウェイのコミュニティの真っただ中に入っていくなんて芸当はできない。無理無理。
とはいえ。無理だといって永遠に尻込みしているわけにもいかないし、志を同じくする人たちと酒を酌み交わすことはきっと楽しいはずだ。誰だってあの凄いゲームを作った、素晴らしい絵を描いた、名立たる楽曲を書いたあの人と話したいのだ。
じゃあ、どうするか。ぼくもコミュニケーション能力がそこまである人間ではなかったけれど、だからこそ何か助けになるものがあるかもしれないので、わずかばかりの TIPS を書き起こしてみることにする。
8. まず、絶対に必要なもの。
名刺。これは絶対に必要だ。名刺を差し出しながら自己紹介するというテンプレートは、コミュ障にはとても有難い。相手が名刺を持っているかどうかは関係なく、自分が自己紹介する流れが生まれることが重要である。
また、ガヤガヤ五月蠅い飲み会の席で、あなたの名前は恐らく聞き取れないし、楽しく話したことは覚えていても、翌日には誰と何を話したかすっかり忘れているものだ。そんな時、名刺は転ばぬ先の備忘録となってくれる。
名刺には、自分を紹介する情報へのリンクが記載されていると良い。Twitter や Facebook のような人口の多い SNS がベストで、絵描きなら tumblr なども良い。Twitter ならアイコンを付けておくと一発で紐付けができるのでベスト。*1
7. 狙い目は三人組か、二人組。
掘りごたつ式の飲み屋なら始めは4人ないし6人での会話が保障されているけども、時間が進むにつれて人は流動的になり、気が付くと自分の周りから人が消えて一人で酒を飲むことになったりする。立食形式では最初からクライマックスだ。
さて、今こそ行動開始である。この時極力やってはいけないのは、同じく一人で飲んでいる人に声を掛けること。彼は高確率であなたと同じく一人でこの交流会にやってきた人で、偶然話が盛り上がることはあるかもしれないが、彼から会を主催したコミュニティに繋がることはないからだ。次の交流会に彼が来る保証もないし、また同じ思いをする羽目になるだろう。
狙い目は、三人組か二人組だ。特に三人なら、誰かしら、或いはその全員が大きなコミュニティと関係している可能性が大きい。三人が談笑しているところに割り込むのは難しいので、一人が酒や料理を取りに孤立した所や、誰かが触っているガジェットやソフトウェアに飛びついたりするのが望ましい。
「あっ……それ……面白いですよね。自分もやってます……」
なんて話しかけたら製作者だった、なんてこともたまーにある。
6. 誰もあなたに興味はないし、誰もあなたを拒まない。
ひたすらぼっちで飲んでいたら、
「こんにちは、あなたはなんて名前ですか? どんなモノを作っていらしているんですか?」
なんて声を掛けてくれて、にぎやかな数人の輪に入れてくれる。
そんな都合のいい展開は存在しない。そりゃ美人局だ。
あなたが「誰か話しかけてくれないかなー 話しかけてくれたら楽しく話せるのになー」と考えているように、他の誰もがそう思っている。なら、あなたが話しかけるしかない。幸いなことに、「お前誰だよ、知らねーやつが話しかけてんじゃねーよ」なんて相手のことを拒むような人はいない*2し、あなたがちゃんと一定の活動をしていてアピールできるモノを持っているなら、向こうから興味を抱いてくれるだろう。
他人に期待することはやめよう。期待するのはから揚げにレモンを掛けるかどうか聞いてくれることだけである。
5. 幹事には、人と話している時に挨拶する
実は完全ぼっちというわけではなく、誰か友人なり知り合いに誘われて言ったはいいが、本人は人気者だったり幹事だったりで他の人に囲まれていたりして、あれ、ぼくはどうすれば……と一人で酒を飲むしかないケースがあったりする。いや、実際かなり多い。
彼/彼女に話しかけるタイミングだが、他の人と話が終わったタイミングを読んでこっそり挨拶にいくと、「来てくれてありがとう、今日は楽しんでね」で終わってしまったりする。それよりも、誰か他の人と親しそうに話をしている時*3。そういう時の方が狙い目なのである。本人への挨拶もそこそこに、話し相手が気を利かせて去るよりも早く、「こんにちは、自分こういうもので」なんて名刺を渡してしまう。
そもそも人気者のあなたの友人は高確率で人と人を繋げることを楽しみしていたりするので、言われなくても「あ、彼はね」なんて紹介してくれるかもしれない。自分も、誰かを「楽しいから来なよ」と誘った時は、できる限り一人以上紹介するようにしている。「この人は○○さん、こちらは●●さん」という第三者の紹介ほどコミュ障にとってありがたいものはないと、身を持って知っているからだ。
タイミングさえ合えば、あなたの友人が次の誰かから挨拶される前に、あなたは良き話し相手を見つけていることだろう。そうして関係は広がっていくのである。
4. 相手か自分の話だけをする
やりがちなのだが、関係ない話はするべきではない。今日の天気や気温の話くらいならまだいいとして、時事ネタとか、ニュースとか、アニメやゲームや政治の話とか、今の相手と自分とは関係ない話、NGである。そういうのは、親しい仲の人とすべきなのだ*4。「ガルパンはいい」かもしれないが、まだ大してお互い知りもしないのに、推し戦車と細かすぎて分からない劇場版の好きなシーンを共有しても微妙な空気になるだけだ。それに、テーマによってはいらぬ宗教戦争を招く可能性がある。危険だ。
話題にするなら、相手のこと。自分が相手にどういう興味を持っているか、相手のどんな活動を素晴らしいと思っているか。そして、自分のこと。自分がどういう好奇心のもとに、どういう活動をしてきたのか。このイベントの他に、どういうイベントに参加しようと思っているのか。相手はどうか。相手の興味と自分の興味が程よく大皿に盛りつけられたとき、コミュニケーションは完成する。その他の雑談はスパイスに過ぎない。コミュニケーション自体が完成するまでは持ち込むべきではないのだ。
なお、7.のテクニックでガジェットやソフトウェアを話のきっかけにした場合や、相手から話を振られた場合、或いはそもそも交流会がガルパン視聴会後の懇談会だったりした場合はこの限りではない。その時も、あくまで「相手がどう思っている」「自分がどう思っている」という視点を保つこと。間違っても「世間的な評判悪いですよね」みたいなどうでもいい話はしてはいけない。
3. 作品は作っておく
クリエイター系の交流会なら、やっぱり作品は作っておくべきだ。何故なら、小さいものであっても何か作った、描いた、書いたことがある人と、そうでない人では大きな隔たりがあり、その人が「口だけでない」ことを一発で証明してくれるからだ。
その作品はもしかしたら交流会に参加する名立たるクリエイターたちに比べればゴミみたいなものかもしれないが、少なくともそこには作り手の思いやこだわり、意志が必ず込められている。そういうものは、人の興味を引き付ける魅力を秘めている。
まあ、数えきれないほどのニュービー*5を見てきている業界人にとっては一個人の作品なんてあんまり興味がないかもしれないけども、そういう人たちのフィルタリングを考えても、とりあえず何か作品は作っていくと、強い名刺のお供になる。
2. 自分も二人組で行く
実は、一番手っ取り早い裏技がこれ。二人で行った上で、上の TIPS を実行すれば一気にイージーモードになる。三人組や四人組でも入っていきやすいし、例えコミュ障二人でも、ぼっちよりはずっと勇気が出るというものだ。別行動するなら、相方が誰かをキャッチしたりされたりしているか常にチェック。どちらかがフックしたら美人局よろしくもう一人が現れるというワケ。
ちなみにこのテクニック、婚活パーティでも使えるらしいよ。
1. そもそも事前に繋がっておく
そもそも SNS を活用しているなら、事前にコンタクトを取っておくのが良い。相互フォローになる、リプライを飛ばす、メールで作品の感想を送る。或いは、自分の作品が相手の目に入るよう合同誌や作品まとめに応募するのも良い。相手が自分を何らかの形で認知してくれていれば、名刺一丁でも随分話しやすくなる。
逆に、相手のことを全く知らないで話題を紡いでいくのは結構難しかったりするので、こちらもアンテナを強化しておこう。「●●といいます」と名刺を返されたとき、その絵柄に見覚えがあったら勝利も同然だ(?)。あっ、あのイラストを描かれた人ですね。あのゲームに参加された人ですね。向こうだって、自分の作品に興味を持ってくれる人というのは、誰であっても嬉しいものである。
まとめ
きっかけさえ作ってしまえば、後は案外たやすいものだ。が、その一歩目が何より難しいし、いったんあるコミュニティでそれなりな立ち位置を得ても、またヨソのコミュニティを覗こうとすると同じ目に遭ったりする。だからこそ、こういうテクニックは知っておいて損はない。*6
まあ、それでもやっぱりどうしてもコミュニケーションが苦手で表に立てない人は、相手が寄ってくるまで作品を磨くというのも一つの手ではあるのだが……。