某氏が「やってられるかこの糞運ゲー」と仰ってたのを聞いてプレイし始めました。運ゲー最高。
簡単な説明
ハースストーンは2014年にサービス開始した最近流行のオンライントレーディング・カード・ゲームである。プラットフォームはPC、iOS、Android。ゲームシステムはマナを消費してユニットを並べる、マジック・ザ・ギャザリングに近いものと言えるが、特徴として徹底的にゲームスピードとシンプルさを追求し、気軽に遊べることが重視される昨今のモバイルゲームの風潮に合ったシステムの構築に成功した。
簡単なシステムルール
二人対戦のシンプルなカードゲーム。
プレイヤーは予め構築した30枚のデッキを持ち、先行は3枚、後攻は4枚の手札を持ってゲームを始める。各プレイヤーにはカードの他にマナが与えられ、これをカード上部の「コスト」分支払うとカードをプレイすることができる。マナは毎ターン回復すると共に1ずつ増えていく(最初は1で最大10)。
ゲーム中ではプレイヤーは半身である「ヒーロー」となり、これが30点のライフを持つ。手札から家来である「ミニオン」を召喚したり、盤面に影響を与える「スペル」をプレイしたり、或いはヒーロー自身に武器を装備させたりして、相手のヒーローのライフを0にしたプレイヤーが勝利する。
ルール補足
- カードはミニオンとスペル、武器のみ。
- ミニオンは使用すると盤面に出るいわゆるモンスターカード。
- スペルは呪文とも呼ばれ、盤面に様々な影響を与える使い切りのカード。
- 武器はヒーローに装備され、ヒーローが直接攻撃できるようになるカード。
- なお、カードは誰でも使える「中立カード」と選んだヒーローのみが使える「専用カード」が存在し、スペルと武器は全てが「専用カード」である。
スピーディでシンプルなゲーム性のために施された工夫
- 細かいフェイズ設定が無い。自分のターンなら、いつ何をやってもいい。
- 自分のターンに相手が行動しない。
- 例えば、カードのプレイ*2毎に相手がスペルを使うか確認しなくて良い。この確認作業は、特にデジタルでのオンラインプレイ時に大きなテンポの阻害となる。
- スタックや解決順といった複雑なルールが不要。
- 攻撃側が攻撃対象を選ぶので、防御側がいちいち行動を選択する必要が無い。
- 能力の最適化と勝敗条件の統一。
評価
基本システム
- (+)気を使っているだけあって、ゲームはかなりスピーディに進行する。
- (+)1ゲーム5分で終わることもあるし、長くても30分掛からない程度。
- (+)ルールが単純なので覚えやすい。
- (+)複雑なランダム要素のあるカードや基本的にターン終了時に消滅しない能力強化など、デジタルゲームならではの独自仕様を上手く生かしている。
- (+)ヒーローキャラクターシステムを採用しているが、このシステムには珍しくヒーロー毎のデッキにバリエーションがある。
- (+)極端に弱いヒーローが居ない。どんなデッキでも最高ランクにはなれる。
- (-)運ゲー要素が強い。
- (-)相性要素が強い。このヒーローにこのヒーローは勝ちにくい、というのがかなり顕著。
- (-)あまりに強いので、大会ではデッキを3つ使い、ジャンケンのように繰り出してゲームを始める。
- (+)代わりに、このデッキを使っていれば絶対勝てるということが(あまり)ない。
デッキメイク
- (+)システムがシンプル。カードパックを買えばカードが手に入る。アナログカードと同じ。
- (+)このカード購入はMagic Online*8とも同一だが、高価な割にユーザに受け入れられている土壌がある。
- (+)アドベンチャーモードと呼ばれる独自システム。購入*9するとアドベンチャー(ストーリーのあるゲームコンテンツ)と便利なカードが手に入る。
- (+)デッキは30枚で、同名カードは最大二枚。最上級のレアは一枚なので最高級カードを4積みするMtG*10と比べて、必然的にデッキを作るコストは安くなる。
- (*)カードプールが狭く、単一ヒーローに限ればちょっと*11課金すれば初心者でもすぐ上級者と同じカードリソースを持つことができる。
- (+)上項でも述べた通り、マナ・リソース・カードがデッキに含まれない分デッキメイクはかなりシンプルになる。
- (+)カードはパックを買う他にも作成(クラフト)することができ、欲しいレアカードがあっても出るまでパックを買い続ける必要はない。
- (*)クラフトには専用のポイント=ダストを使うが、このダストは余ったカード、要らないカードを破棄するともらえる。例えば、エピック(SR)カードを破棄すると、レア(R)カード1枚を入手できる量のダストが貰える。
- (*)前述したようにカードの最大枚数は1枚ないし1枚なので、よく余る。
- (-)カードプール*12が狭い上に有用カードとそうでないカードに偏りがあり、大体皆同じようなカードを使う。
- (-)カードの調整は滅多にされないが、される場合極端に弱体化され、殆どの場合ゴミになる。
- (+)ただし救済のため、弱体化された直後のカードは破棄したときのダストが4倍=エピックカードを破棄した場合は別のエピックカードを貰えるといった具合になる。
- (*)最近スタンダードフォーマットが公表された。メインのランクマッチのカードプールを直近の幾つかのエキスパンション*13に絞ることで、初心者の参入障壁を小さくしたが、環境が大きく変わることから現状賛否両論となっている。
ビジュアル
- (+)とても良い。2Dのデジタルカードゲームとしては最高峰と言える。
- HEARTofCROWN もこれを参考に作り直したいレベル。
- (+)引いたカード、使ったカードが邪魔にならない位置で拡大化され、何が起きたか分かりやすい。
- (+)盤面上のカードはコスト/攻撃/体力と一部のキーワード能力以外が省略され、シンプルな姿となって並べられる。
- 勿論カーソルを合わせることでその詳細を見ることができる。
- (+)キーワード能力は太字で表され、ミニヘルプが出るのも嬉しい。
- (+)レイアウトが非常に洗練されている。
- 山札はなぜか立てかけられているし、捨て札置場は存在しない。捨て札を確認する必要のあるカードが(ほぼ)ないからである。
- 山札や相手の手札にカーソルを合わせると枚数を表示してくれるのも地味に良い。
- (+)最大レアであるレジェンド・カードは召喚時に独特な演出が付いていて、使う側にとっては頼もしく、使われる側になっては脅威を増幅させる。
- (+)相手のターンであっても、相手がどの手札を見ているか、何を使おうとしているか、攻撃しようとしているか等がUIで示されるので、情報が多く退屈さを感じにくい。
- (-)仕方ないことではあるが、どうしてもスマホはPC版に比べて見難く操作しづらい。
ゲーム進行
- (+)MtGでいう土地やエンチャントなど複雑なルールのカードが存在しないため、動画配信などを見ていると何が起きているか非常に分かりやすい。
- スペルでミニオンを破壊する基本コストは5であるため、殆どのデッキはビートダウン中心になる。
- 一方でミニオンの攻撃対象を攻撃プレイヤーが選べるため、盤面が拮抗しているときのミニオンは非常に短命である。
- 上項に加え体力がターン終了で回復しないので、攻撃力より体力が高いミニオンの方が評価が高い。
- 逆に攻撃力がいくら高くても体力が低いミニオンは基本的に評価が低い。
- (+)盤面を取るという行動がとても強く、一方で盤面を取り返す強い行動があるため、プロプレイヤー同士の対戦でも1ターンで目まぐるしくゲームが逆転しやすい。
- (-)ただし、盤面を取り返す強い行動がないデッキ(アグロ*14など)は一度盤面を取られたらほぼ逆転できない。
ゲームモード
- (*)構築戦*16のオンライン対戦は、勝利数でランクの上がるランクマッチと記録の残らないカジュアルの二種類。
- (+)ランクマッチは月毎にリセットされる他、その月の最大ランクが最終ランクとなる。最後の一日で負けまくっても問題ない。
- (+)最終ランクに応じて、報酬(カードやゴールド、ダストなど)がもらえる。
- (*)その他、ランダムに抽出されたカード群からカードを選びデッキを作る「闘技場(ドラフト戦)」、毎週特殊なルールでゲームが行われる「酒場の喧嘩」がある。
- (*)闘技場はMtGのようにパックを購入するものではなく、完全にランダムで選ばれたカード群からプレイヤーが欲しいカードを選んでいくもの。当然ゲーム終了後もそのカードはもらえない。
- (-)報酬の割に時間が掛かるし、使っていたカードが貰えないのはMtG経験者としてはしっくりこない。
- (-)必然的にデッキパワーが落ちるので構築戦より面白味に欠けるし、時間があるコアプレイヤーや課金したくない人向け。
- (+)酒場の喧嘩は「全てのカードがコスト1に」「毎ターンランダムでカード獲得」などトンデモルールで対戦が楽しめて、息抜きに丁度いい。
- (+)総じて好印象。ユーザが分散する程多くはなく、各々がよく吟味され工夫されている。
課金
- 課金のみで遊べるコンテンツはスキン*17以外に無い。全てがゴールド(ゲーム内通貨)で購入可能。
- ただし、完全未課金で満足なデッキを作るには一月か二月程度かかり、かなり辛い。
- とはいえ、プロプレイヤーが未課金デッキ、低価格デッキなどを作っている(しそれで勝っている)ので頑張れば何とかなる。
- 課金額の目安は1〜2万円程度。これは殆どの洋ゲーと同水準である。
- パックはセール無しなら40パック6000円。
- 40パック買うと、必ずレジェンド(SSR)が一枚引けるように内部的に調整されている。大体2、3枚出たりする。
- 不要なカードはダスト変換できるので、単一のデッキを揃えたいだけなら1万円もあれば十分。
- 何十パックか買うとコモン・レアはほぼ集まる=ダストになるので、40パック分のダストがレジェンド2枚分になったりもする。
- 総じて、課金しないと辛いが、課金額は少ない。
- パッケージソフト一本分の値段で、パッケージソフト一本分くらいの時間は遊べるといった感じ。
まとめ
- (+)トレーディング・カード・ゲームの基本は踏襲しつつ、カジュアルに短時間で遊べるTCGとして非常に高い完成度を誇っている。大よその要素は直観的で、丁寧なインスト無しでもすぐ導入することができる。
- (+)ルールが単純なためドミニオンのように近似した「ハースストーンライク」ゲームを作りやすい。最近シャドウバースというサイゲームス製のこれがクローズβを開始したが、基本的な面白さはキープしたまま独自のアレンジを加えられているという評価を目にしている。
- (+)盤面で何が起きてるか分かりやすく、配信向け、観戦向け。
- (-)カードプールが狭く、戦略的な幅がそれほど広くないのが多少残念。もしハースストーンライクゲームを作るならここら辺を上手くシステムで解消したい所。
- (*)とはいえ、カードプールが狭いことは覚えやすさにも直結するので、一長一短ではある。
- (-)繰り返し述べてるように運ゲー要素が強いので、将棋より麻雀好きな人向け。
- (-)レジェンドプレイヤーでもないので何とも言えないが、デッキメイクを含めた「実力」の天井は他のゲームと比べてかなり低そうではある。
- (-)現状日本ではテキストが少なく、プロプレイヤーの解説などを読もうとしたら英語のテキストを見る必要がある。
- (+)なんにせよ、ボード・カード系のゲームが好きか、ゲーム製作者なら一度はやっておくべきゲームである。その驚くべきゲームデザインとレイアウトデザインのセンスはとにかく、一見の価値がある。
*1:他の多くの TCG ではマナを出す専用のカードがあるか、不要なカードをマナとして利用する。
*2:カードを使用すること
*3:共通した用語が一定の能力を持つもの。挑発・突撃・聖なる盾など
*4:一人のプレイヤーが延々とコンボでターンを進行するシチュエーション
*6:とはいえ、MtGも大体強いデッキに環境が席巻されるのだが
*7:ターンの開始に一枚だけデッキから引いたカード
*8:マジック・ザ・ギャザリングの公式オンラインゲーム。ハースストーン登場前はオンラインTCGをほぼ独占していた
*9:3000円程度、ゴールドでも購入可
*11:1万くらい
*12:使えるカード
*13:拡張カードセット。テーマと、それに沿ったカード数十枚が纏まっている
*15:ワンターンキル。大抵はゲーム開始直後の1ターン目に勝負が付くことを示すが、ハースストーンでは任意の1ターンで体力30点を一気に削り切る行為も指す。
*16:自分の持つカードからデッキを作り対戦する、基本となるルール
*17:見た目だけが変わる専用のヒーロー等