ビルの合間を猛スピードで移動するスパイダーマンの姿を映画館で見て、魅力を感じなかった少年はいないだろう。テレビゲームの飛躍的な進歩はハリウッド渾身の絵作りに少しずつ近づいてはいたが、それは PS4 版でとうとう臨界点を超えた。
あれから数日たち、無事格好いいスパイダーマンになった #PS4sharehttps://t.co/8yFymTuUxa pic.twitter.com/LxaixzDDDY
— EIKI`@はむころりん8/31リリース (@eiki_okuma) September 28, 2018
手放しで褒めてもいい出来なのだが、それはあまりにも多くの人がやっているので、一つ一つ要素を紐解きながら最新 AAA ゲームのベンチマークとして少し紐解いてみたい。
まあ、結論から言うと「買え」ってことなのだが。
キャラクター挙動
- (+) ビルの合間を飛び回る爽快感。そして単純な操作。
- (+) 壁に当たったり、障害物に当たっても勢いを削がれたり酔わないように細かく調整された挙動。それでいて、物理的に不自然な点を感じさせない。まさしく AAA クオリティと言える。
- (*) スイング挙動の本来の楽しさは、どこにウェブを発射し、いかに美しい逆放物線を描き、加速するかという所にあるが、これはゲームというよりアクティビティの分野である。結果的に面倒くさい部分を大いにそぎ落とし、簡単だけどビュンビュン飛び回れるようにした方が多くの人々の関心をひきつけた。
- (+) ゲーム後半になるとスイングより、建物の出っ張りに飛ぶ→タイミングよくジャンプで加速、の移動が効率的になる。ゲームの通常移動効率が後半になるにつれて高まっていくと、オープンワールドであっても飽きづらい。
- (*) 一応ファストトラベルはあるのだが、ほぼ使わなかった。
戦闘
- (+) 戦闘のシンプルで統一された操作。後半に進むと細かな操作が増えてくるが、混乱しない。
- (-) 敵の攻撃力が高く、最低難易度でも結構難しい。中難易度だと後半でも死ぬことがしばしば。
- (-) 基本的に一対多だが、スパイダーマンの戦闘性能は意外とストイックで、範囲攻撃がなくいかに対面している敵を素早く処理するか×敵の数という戦闘になる。無双系に慣れた日本人だとそれも少し難しく感じるかも。
- 序盤でも平気で敵集団の中にのけぞり無効敵を入れてくる鬼畜さ。
- (*) 実はさらっとしたチュートリアルで記憶に残りにくいガジェットを戦闘に織り交ぜると、難易度がぐっと下がる。というか恐らく推奨されている。ウェブ・ボムやインパクト・ウェブでどんどん敵を貼り付けにしていくとスパイダーマンらしい戦いができる。
- (-) 一部のガジェットは出番がなかった。
- (+) ステルス戦闘がちゃんと面白い。高所から敵を縛り上げて行くスパイダーマンらしい戦い方で、MGSとはまた一線を画した面白さがある。
システム
- (+) これが独特!というシステムは特にないが、奇をてらってプレイヤーにストレスを与えるよりはよっぽどマシ。まず及第点以上。
- (+) 「スキル」はリソースコストを低めに抑えつつプレイヤーに成長を感じさせ、かつ複雑な操作を主体的に「会得」させることでチュートリアルを兼ねるというもの。最近のアクションゲームでよく見るものだが、正直最適解だと思う。自分も入れたい。
- (-) 広い町を縦横無尽に飛び回り、余すところなく使っている一方で、地上部分に対するユーザの意識が薄まっている。いや、意図的に薄めているのだと思うが。
- (-) SNS や町に下りて挨拶したりできる所はもう少しゲーム要素と関わっても良かったのでは。イマイチ意味を感じづらかった。前述した地上部分に対する意識も少し改善するかも。
- (+) 地味に、「ハトを追う」「ドローンと追いかけっこする」なんて要素は世界初では。いかにプレイヤーが町の中を縦横無尽に動けるか、それを顕示するかのような仕様。良い。
ストーリー
- (*) ストーリーはあっさり一本筋でハリウッドらしいといえばハリウッドらしい。
- (+) 一つ一つのミッションの作りが丁寧。大抵カットシーンがあるし、似たようなシチュエーションが少ない。町の中を移動するヘリを追いかける、ような燃えるシチュエーションも多々。
- (-) サブミッションこそあるがサブストーリーが(ほぼ)ないので、ボリューム不足感は少しある。
- (+) スパイダーマンだけではなく他のキャラクターを操作したり、ミニゲームや町の状況の変化など、起伏があって飽きにくい。構成自体は一本道だが、中弛みのような感覚は一切無かった。
- (+) ストーリーの他に、町のあちこちで発生するサイドミッション。強盗を退治したり、誘拐犯を検挙したり、暴走車を止めたり、写真を撮ったり……スパイダーマンらしさが出てて良い。
- (+) 地味な点だが、Rスティックを押し込むといつでも次の目標地点が見えるので迷うことがない。洋ゲーでよくあるシステムで、探索的な要素が一切なくなるが……見つからないストレスと比較するともうこれでFAでいい気もする。
グラフィック
- (+) まあ、迷うことなくまず100点をあげてからスタートって感じ。
- (+) 町の作りこみがすごい。インテリアマッピングによるビルの実在感、マンハッタンらしい密度の渋滞車両、そして群集。
- (+) 町の人々は数が出ているだけでなく、細かなアニメーションにも気を使うことで活気を演出している。バスケをしている人々のループが1分以上続いたりとか。これほど生きた群衆はアンチャーテッド4以来か。
- (-) 一つ前とトレードオフだが、人物一人一人の作りこみは少し甘め。特にフェイシャルモーション周り。(最近の他ゲームのレベルが上がりすぎというのもある)
- (-) 室内では少しのっぺり感じることも。全体的に画面が暗く*1、誤魔化している所も多少見受けられる。
- (+) 戦闘中のエフェクトは勿論、街を移動したときのヒント表示など、画面が見づらくなったり、分かりづらいケースがほぼない。
- (-) 唯一、画面左端に小さな文字で出るヒントはちょっと見にくい。特に序盤は説明事項が多いため、若干テンポを削がれるかも。
総評
- (+) 町の移動が楽しい、映画の世界を余すところなく再現した、そんな尖った点が多々ある割に、これといった欠点が見つからない隙のない作り。
- (+) とりあえず、「最近 AAA ゲームやってないなー」という人はやったほうが良い。忙しくて逃した人も今から追うべき。その価値がある。
*1:家のテレビでは明るさを最大に設定しないと夜が見えなかったレベル。