帝王後期AOEとは

かなりニッチな記事を書こうと思う。
これは、自分が高校生の時他の寮生と遊んでいたゲームの話である。ゲームの名前は Age of EmpiresII (正確には AoC の方)と誰もが知ってる(?)リアルタイム・シミュレーションゲームだ。知らない人に簡単に説明すると、一人で大量の村人や兵士を操作し、建物を作ったり新たな兵士を生み出したり戦わせたり、ということを主軸に置いたリアルタイム進行のゲームである。
普通のプレイヤーは石器時代から始め、文明を進化させつつ相手を滅ぼすという文明戦争を繰り広げるのだが、実はこのゲーム、開始前オプションで「全ての文明が最大まで育った状態」から始めることが出来る。ぼくらが遊んでいたのはそれだ。
するとどうなるか。まどろっこしい定石や序盤戦術は完全に吹っ飛ぶ。開始十分で100人の軍勢が揃い、砲台ラッシュや城ラッシュという戦略が生まれる。あまりの強さに(恐らく開発陣はレベルアップの大変さを見越して設定したのだ)禁止となった文明もある。
今これを説明した所でAoEIIはほぼ下火だし、そもそもAoEを知らない人には全然分からない話かもしれないが、ゲーム開発においてきっと役立つ気がするのでメモ代わりに記しておく。

ルール

人口制限200人(最大)、マップ最大、帝王後期スタート(全研究オープン)、初期資源多。
更に内政より兵力戦を楽しみたい場合は、ステージは深い森か島を選ぶ。深い森は特にお薦め。
ちなみにこのゲーム、8人でやると大体4時間くらいかかるので注意。最長は8時間とかあった。

ゲームの流れ

  • 序盤

序盤の定石は無いといったが、一応テンプレ的なものはある。初期資源が豊富にあるので、まずは町の中心をもう一つと、城を作る。城はユニークユニットを使わない場合無くても良いのだが、帝王後期ルールには開始八分ラッシュというのがあるので、あると安心。これら二つを初期の中心に隣接した形で作る。
とりあえず城壁を作りながら、内政に勤しむ。家も暫くは建てなくていい。このゲーム、前述した開始ラッシュ以外はほとんど速攻が成立しない。研究が全て終わっているので建物は硬いし、内政の効率もいいため兵士を作るより内政したほうが成長率が格段に高いからである。
ちなみに羊は狩らない。食料は畑で、金は近くを掘削した後は市場の貿易で行う。木は豊富にあるので自由に切り出していく。

  • 中盤

文明にも因るが、石資源が大切になってくるため、市場で買い占めるのが割と良い。木は深い森ならまず切れないし、食料は最大効率の畑で腐るほど取れる。金は交易が使えるため、ほぼ困らない。石だけが不足するのだ。
中盤にもなると小競り合いが発生する。小競り合いといえど、通常ルールの10vs10のみみっちい戦闘は忘れよう。大体、50vs50以上の規模だ。ここで中央を取れると大分有利になってくる。
ちなみに、相手の陣へすり抜けて内政を荒らす作戦はあまり役に立たない。中心が四つも建っていれば、多少のダメージは一瞬で回復してしまう。攻める時は、殺すときである。

  • 終盤

村人は100人も居れば充分なので、あとの100人が軍勢となる。AoEIIはAoEIIIと違ってどんなに強いユニットも人口的には一人分なので、恐ろしい光景が見られる。
このゲーム、一番長いのはこの終盤である。100人の軍勢は割と簡単に蒸発するが、その頃には次の100人が出てくる。溜めに溜めた内政力を生かしての総力戦だ。
4vs4なら戦力をどこに集中させるかもかなり大切になってくる。自軍の兵士を三箇所に分けて運用するなど日常茶飯事だ。敵3人を1人でしのぎつつ、仲間が薄い所を狙えば勝利は目前である。

戦術

ユニークユニットのラッシュは後述するので省略。

  • 騎士ラッシュ

近衛騎士を大量に揃え、相手を滅ぼすオーソドックスで強い戦術。機動力がべらぼうに高くどこでも参上するし、その高い攻撃力は攻城兵器が無くても建物をどんどん更地にしていく。70以上揃えると、槍兵が最大まで研究されない文明ではかなりキツイ。

  • 歩兵ラッシュ

軍勢が基本的にMAXまで揃えられる帝王後期ルールではあまり採用されない。弱いからだ。が、安いし早い。歩兵が強い文明国なら十二分に採用できる戦略。ゴートは基本コレ。

開始直後のみ。兵舎を速攻で立てた後、初期資源で作れるだけイーグルウォーリアを生み出し、斥候の1人と合わせて敵陣に突撃させる。相手が町の中心しか作ってなかった場合、弓に耐性があるため押し切れる。が、城は流石に壊せない。

  • 破城投石機ラッシュ

破城投石機とは一度に大量の投石を行うアレ。これを40くらい揃え、後はハサーで肉壁を作る。で、一斉放射。ガチで強い。ほぼ全ての兵士や建物が一瞬で蒸発する。騎兵で近づけばなんとかなると思うかもしれないが、近づけない。韓国を禁止文明に追い込んだ強戦略。
ちなみに攻城兵器はコストが高めだが、上手く運用すれば白兵に比べて死ににくいので案外安い。ただし全滅した時の立て直しは難しい。

ヘビースコーピオンを大量に揃える。貫通なので、数が多いと多いほど強い。象を滅亡させられるのが強みだが、機動力がなく、攻撃力も弱い。また、建物も壊せない。あと、数が少なくなると途端に弱体化する。

  • 砲台ラッシュ

石を買占め、塔ラッシュを砲台でやる。不可侵エリアが着実に増えていく。攻め込むよりは、敵のメイン攻撃ルートを封鎖し、敵を引き付けてその間に仲間が攻撃するような状態を狙う。何より強いのは石を買い占めるため相手にミラー戦術が出来ないことと、ユニット枠を全く消費しないため別途防衛ユニットを大量に用意できることである。トルコを禁止文明に追い込んだ強戦略。

  • 城ラッシュ

正確には城とそのユニークユニットによるラッシュ。制圧力がとにかく高い。帝王後期だと町の中心が非常に安いので、隣接して立てれば「町ラッシュ」になる。
城は石だけで建てられるのもポイントで、砲台を建てる予定がなければ軍勢強化に影響を及ぼさないのもポイント。

文明

文明のパワーバランスもかなり変化していく。AoEIIの記憶が薄々ある人しか分からないが、順に解説していく。AoEIIでの文明評価を覚えていれば、その変化は割と面白いと思われる。

  • フン

騎士文明。近衛騎士ラッシュが主な戦略となる。騎兵速度アップが強いが、他のボーナスはほぼ使わない。弓騎兵も使わない。タルカンも近衛騎士が充分強いので、気が向いた時にしか使わない。
他のユニットはそこまで強くないが、重要になってくる槍兵が最大まであるので詰むことが無い。家を建てなくてもよく戦略が単純なので初心者にお薦めの文明。

  • モンゴル

弱い。マングダイは帝王後期ルールでは大して猛威を振るわない(弓攻撃タイプのユニットは大体不遇である)。ハサーで壁を作っての攻城兵器戦略が主戦略になるが、いまいちピンとしない感。
あと弓兵が長槍兵までしか無いのがかなり痛い。象で即死。

  • ペルシア

最強文明の一角。象ラッシュがとにかく強い。というか象だけで勝てる。五十体も集まればまず止まらないし、全てを更地にしていく。弱点のはずの矛槍兵(最大研究の槍兵)にも同数では楽勝で勝ってしまうし、矛槍兵まで届かない文明はお疲れ様ムードになる。間違いなく攻撃力最強のラッシュ。
が、コストが高く生産も城から+凄く遅いので、全滅させられると立て直しが難しい。機動力も低いため、工夫次第で割と対策することが出来る。いいバランスである。
とはいえとにかく象作って指示された所にぶっ込めばいいので、初心者が使ってもかなり役立つ。

最弱。騎兵が闊歩する帝王後期はとにかく弓が不遇で、騎兵がいなくとも機動力の低さと攻撃力の低さを併せ持つ弓兵は歩兵との混成部隊でたまに見る程度。散兵とか間違えて生産した時くらいしか見ない。
まあ、城を範囲外から十年かけて壊すことは出来るかもしれない。

  • マヤ

普通。イーグルウォーリアが強いが、軍隊自体はアステカの方が強い。初期町の人+1や資源+20%はかなり使えるが、軍隊がいまいちピンと来ないので一気に押し切られてしまう。騎士がかなり便利なので、イーグルウォーリアの運用もちょっと上級者向けである。

  • アステカ

普通。軍事はマヤより強い。ジャガーウォーリアが歩兵を蹂躙してくれるので、イーグルジャガーでほとんどの構成を抜けるのが強み。機動力は低いが。
箱にボーナスが出るので、箱を頑張って集めておくと地味に後半効いて来る。

兵器文明。ヘビースコーピオンと歩兵を主体とした部隊が強め。投石器や大砲も強い。ウォードレイダーもまあ居てもいいかなという程度。メインの一つとして使ってたはずだがあんまり印象に無い文明。

  • スペイン

フンよりテクニカルな騎士文明。コンキスタドールは遠距離系ユニットで珍しく帝王後期でもそこそこ使えるユニット。また、フンと違って大砲や砲台が使えたり、強化壁が使えたりとより堅固な攻守が出来る。
なんか金のイメージが残ってる。金を沢山使ったからだろうか。

  • ビザンティン

堅い。建物のHPにボーナスが付くのでとにかく堅い。壁壊せない。ユニットはあまりピンと来ない。カタクラフトは割と強いハズなのだが、帝王後期ではコストの差が薄まってしまうので「劣化象」という印象である。
槍兵も最大まで育つし大砲もあるので防衛戦が得意。砲台も使えるので市場でとにかく石を買い込んでるのはコイツ。

  • 日本

最初の方はあまり使われてなかったが、遠投投石機の強さが研究されてからは使われるようになった。15機くらい用意しておくと一撃で建物が蒸発するので、即展開、即発射、即撤収で更地を作る作業が強かった。
しかしユニットが微妙すぎてあんまり強くない。歩兵文明。

  • バイキング

文明ofthe空気。ブリトンより使用率低い。島ステージであまり遊ばれなかったのもあるか。海を制圧できるのは強いが結局ノルマンディーからの大量兵士展開が強かったのであまり海戦の機会が無く。

  • 中国

弱い。連弩兵の国。ブリトンよりは強かったかもしれないが、それでも騎兵で簡単に滅亡する。ユニットがそこまで強くない上に文明ボーナスが悉く関係ない感じなので、イマイチ。

  • トルコ

禁止文明。ユニークテクノロジーである砲術で大砲と砲台の射程が延び、砲台ラッシュで1vs4でも完封できてしまった。実はこの文明を使って砲台ラッシュを開発したのはぼくなのだが、あまりに強すぎたので禁止されてしまった。特にメインで遊ばれてたパッチ1.0bは破城槌が砲弾を弓として扱わなかったので、まず突破される余地がない。ちなみにイュニチェリも強い。

  • チュートン

チュートンナイトがやたら堅い国。トルコが禁止されてからは砲台戦法がこの国とビザンティンに移った。近衛騎士も使えるので主に近衛騎士や大砲で戦う。チュートンナイトも強いのだが機動力の面から結局近衛騎士を使ったほうが使い勝手が良い感じ。矛槍兵もいるので防衛も得意。

  • サラセン

強い。驚くことに、強い。
マムルークが色んな国の主戦法である騎士ラッシュを蒸発させる上、射程が長く歩兵にも強い。機動力も高い。弓兵には弱いが使ってる人がいない。たとえ使われても、このゲームでは大体味方一人と共同戦線を張るので、こちら側には近衛騎士も居たりする。無敵である。
マムルーク70体とハサー30体でも用意しておけば大抵は抜ける。内政は味方の騎士に任せておく。
唯一、ボーナスを持ってるとはいえ象には負ける。槍兵は長槍までしか無いので、象が来たら逃げる。

  • 朝鮮

禁止文明その2。投石器の射程+1。これにより、全ての文明が蒸発してしまった。
ペルシアの象といいサラセンといい、普通のAoCで不遇な要素は帝王後期だと軒並み鬼のように強いらしい。まあ多分、研究後が強いというコンセプトなのだと思うが。あと、射程の長さはミラー戦略で一方的に有利を取れるので禁止レベルに強い。
ユニークユニットの戦車は……暇な時に溜めておく程度。とにかく投石器が強すぎた。

  • フランク

空気文明その2。騎士が強いのはいいが、槍兵が長槍兵までしかアップしないので劣化フンであり、人権が無い。騎士と騎士出し合って負けてしまうのでダメダメ。

  • ゴート

マイ・フェイバリット文明。別名ゴキブリ文明。ユニークユニットのハスカールが兵舎から湧き出てくる上、生産スピードが数秒なので、敵とぶつかって相打ち=勝ちに等しい。しかも弓防御を持ち、相方の槍兵も矛槍まであるので、あとは何も考えず攻めるだけ。槍兵もどんどん湧き出るのでアンチペルシアにもなる。
城が要らないので終盤高くなった石を売って肉を喰らうのが良い戦略だった。海戦でもたった一人町の人が相手の大陸に着けば勝利できたので強かった。
唯一壁を張れないというデメリットがあるが、この文明で壁を張ったら負けである。肉体で押し込むだけの男らしい文明。

まとめ

勢いだけで書いてしまったがこのくらいである。やはり大分忘れていたので(特に空気な文明はほぼ忘れていた)攻略サイトを見ながら書いていたが、盛りや誇張は一切無い。とても楽しいゲームだった。
しかし上にも書いたとおり一試合四時間は平気でかかるので、今AoCを買ってきてもやる機会はまず無い。八人もプレイヤー集まらないし。あの頃が懐かしい。
ともかく、プレイヤーによるゲームの新たな可能性の開拓という面で、願わくばこの記事が何らかの役に立てることを。