やさしいビットコイン入門 - 暗号通貨の仕組みと展望

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 ットコインが盛り上がっている。

 さすがに、そろそろ一度も名前を聞いたことが無いという人は居ないだろう。ニュースになったり、億万長者が出たり、詐欺が起きたり、池上彰に解説されたり。国内大手である取引所の bitFlyer の CM も、ゴールデンタイムでよく見るようになってきた。

 しかし、多くの人たちにとって、ビットコインに対する認識は同じだろう。得体の知れないもの一体ビットコインとはなんだ? と。

 ビットコイン決済のようなものは最近増えてきたが、まだまだ多くの暗号通貨は使い道を持たないのが普通であり、その価値は直感的ではない。通貨といえば、古くは米や穀物、金貨に銀貨、宝石など、そのものの価値が担保されていることが一般的であり、国家というとてつもなく大きな規模の保証人がいて初めて硬貨や紙幣のようなものが存在しうるくらいのものだ*1。にもかかわらず、未だ取引においてはアフリカにおけるクレジットカード並の利便性しかないビットコインが、登り龍のように価格を上げ、やがて既存の通貨を超えるとまで言われている。これは一体どういうことだろうか。

 ビットコインの価値の源泉。それは、とあるシンプルかつ革命的なシステムによって成り立っている。或いは、ビットコインだけでなく、今後のデジタル社会そのものの在り方を変えてしまう力すら持っているかもしれない。今回はそのちょっとだけ技術的な話を織り交ぜながら、ビットコイン・暗号通貨が一体どういうものなのか、どうやって作られているものなのか、そしてその展望はどうなるのか、今感じていることを述べていく。

ちなみに、最近にわかに流行っている「仮想通貨は儲かる!」系の記事ではない。あしからず。

基礎知識

暗号通貨と仮想通貨

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 まず、始めに基礎的な所から。

 ビットコイン暗号通貨の一種である。暗号通貨とは読んで字の如く、暗号技術をシステムの基幹に用いた通貨である。一方で、仮想通貨という言葉もよく聞く。広義の仮想通貨は電子マネーやゲーム内マネーを含むので厳密にはこの二つは異なるものなのだが、今仮想通貨といえば殆どこの暗号通貨を指すと思って良い。ちょっと通な言い方をしたいなら、俄然暗号通貨を用いるべきである(?)。

 暗号通貨は他にも、ビットコインの技術を基盤としてイーサリウム、ライトコインリップルネムモナコインなど様々なものがそれぞれ別の哲学・別の技術の下に作られている。これらは基軸通貨たるビットコインに対して、アルトコインAlternative coin)と総称される*2。既に十分値上がりしてしまったビットコインと比較してまだまだ成長の余地があるのが特徴で、今年だけでも数倍はおろか、10倍、100倍になっている通貨もあり、投機対象として注目を集めている。

分散型と中央集権型

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 現在流通している全ての紙幣・貨幣は中央集権型の通貨である。即ち、政府がその価値を保証し、その政府の統治の下、安心して市場で使えるものであり、国家間のたゆまぬ努力によって、複数の通貨が共存しながら安定した価値を持ち続けている。

 一方で、ビットコイン分散型の通貨である*3。つまり、政府のようなその価値を保証し続ける者がおらず、誰によってその価値や流通をコントロールされることなく、それでいて一定の根拠の元に価値が維持されているのだ。電子マネーや、かつて流行ったような詐欺通貨(円天など)と一線を画すのはここである。しかし、この話は多くの人にとって直感的ではないだろう。金貨や米のようにそのものに価値を持たないのに、価値を保証してくれる人もいない。そんなことは可能なのだろうか。そう、可能なのである。次の項目でそれを説明して行く。

 

ブロックチェーンという技術

暗号通貨とトランザクション

 暗号通貨の実体とはなんだろうか。デジタル上の通貨なのだから、データであることは分かる。「○○さんが3ビットコインを持っています」と書かれたデータが無限に存在するのだろうか? 否、その考えは根本的に間違っている。

 暗号通貨とは、トランザクションの集合体である。トランザクションとはコンピュータにおける処理であり、銀行などにおける取引のことであり、具体的には「○○さんが▼▼さんに3ビットコインを送りました」というデータのことである。ビットコインにおいて記憶されているのは、こうしたやり取りなのだ。あなたが「3ビットコイン持っている」とは「あなたが誰かから3ビットコインを受け取り、それはまだどこにも送付されていない」という状況を示している。

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 そして、暗号通貨においてこのトランザクション全て保存されている。たとえ100年後にビットコインが存続していたとして、100年前の今日、誰かが行ったわずか数百円相当の取引はきちんと保存されていて、100年後の世界で誰でも確認することができるのである。

ブロックチェーン

 取引は同時にいくつか纏めて処理される。この纏めたものをブロックと呼ぶ。全てのブロックには作られた順番に番号が振られ、一つ前のブロックと接続される。これが、ブロックチェーン。暗号通貨を支える基幹技術だ。このブロックチェーンは、しばしば暗号通貨の台帳とも呼ばれている。前項で説明したとおり、この台帳の最初のページには世界で最初のビットコインの取引が記されている。

 ここから、ブロックチェーンある性質について分かりやすく説明しよう。ブロックチェーンにおいて、各ブロックは前ブロックの写真のようなものを撮って隅っこに小さく貼り付けてある。最新のブロックを見れば、ブロックの中に前ブロックの小さな写真、その中に更にその前に小さな写真……が無限に映っていることだろう。

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 現実世界なら三回も拡大すれば小さすぎて何も見えなくなってしまうが、ここはデジタルの世界なので、拡大すれば無限に見ることが可能だ。

 すると、どうなるか。誰か悪意を持った人が、過去の取引を改竄(かいざん)しても、それが一目でバレてしまう。もし、取引の一部を改竄したいなら、その後ろに連なった全てのブロックの写真の中身も変える必要があるのだ。しかも、書き換えている間にもブロックはどんどん連なっていく。

 これが、ブロックチェーン対改竄性である。事実、ブロックチェーンの一部を書き換えるという行為は暗号通貨が成立してから数多のハッカーがチャレンジしたものの、ただ一度として成功していない

ビットコインブロックチェーンを見たいって? 至って簡単だ。このサイトにアクセスすれば良い。ここのブロックを見てもらうと分かるが、一目みただけでは誰が取引している、というようなことはわからない。しかし、確かに全ての取引はここに記され*4、二度と改竄されることはないのだ。

採掘者(マイナー)と Proof-of-Work

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 もう一歩話を前に進めよう。実は、写真を撮るだけではコンピュータ処理で簡単に改竄できてしまう。そこで、ブロックチェーンでは第三者による承認作業が行われる。要は、ハンコを押しているのだ。こうすることによって、改竄者はハンコも偽造する必要が出てくる。現実世界と同じようにハンコは一つ一つ形が違うので、これを過去に遡って全て偽造するとなると結構な手間である。このハンコの手間によって、いかに高性能なコンピュータを用意しようとも、ブロックチェーンの改竄は実質不可能となっているのだ。

 ハンコの生成はブロック毎にルール*5があり、使い捨てである。世界中のハンコ職人は、常にこぞってその一回だけ使えるハンコ作りを競争している。何故か。ハンコを作って承認した職人は、報酬が貰えるからだ。現在は1ブロックの承認につき12.5BTC、日本円にして1000万円超もの報酬である。職人たちはこの金脈を掘る採掘者に例えられ、マイナーと呼ばれている。そして、こうしてマイナーたちが仕事をするおかげでビットコインの安全性は保証されており、この営みを Proof of Work (PoW) と呼ぶ。

 これが、中央に誰も管理する者がいないにも関わらず回り続ける、暗号通貨の技術のあらましだ。世界中に支持者が居る限り、たとえ核戦争が起きてもビットコイン消え去ることはない

余談1:マイナー報酬と発行総量

 マイナーに与えられる報酬は、新たなビットコインが発行され、そこから支払われる。現在、流通しているビットコインは約1670万枚ほどらしい。

 そして、ビットコインにおけるマイナー報酬には半減期というものがシステムで設計されており、一定ブロック数ごとに報酬が半分になる。掘り続ければいずれ報酬は1BTCを割り、0.0001BTCを割り、BTCの最小単位(0.00000001BTC)を割ってゼロになる。このゼロになるまでのビットコインの発行量は約2100万枚であり、決して揺らぐことはない。

 新規発行がゼロになってもマイナーが掘るのをやめるかというとそうではなく、ビットコインの送金には一定の手数料が必要となるので、その手数料からマイナー報酬が支払われるようになる。どっちにしても、この状況が訪れるのは 2140 年という遠い未来の話らしい。

余談2:実際のブロックチェーン

 さて、分かりやすいように写真とハンコで説明したが、理系の人間には実際に使われる技術用語で説明した方がわかりやすいだろう。
 各ブロックは前ブロックのハッシュ値をデータとして持つ。よって、いずれかのブロックを書き換えれば後ろのブロックとのハッシュ不整合が起きてしまう。加えて、ハッシュを生成する際にハッシュ値先頭18桁が0*6となるように任意の文字列(ノンス)を加える。このノンスを総当りで探すのが採掘=マイニングだ。これにより、改竄者は後続の全てのブロックに対してマイニングを行わなければならず、到底不可能であることが分かる。

 尚、現在はマイニングは組織だって行われており、個人のマイナーは到底太刀打ちできないため、他の人とマシンパワーを合わせるクラウドマイニングが主流である。また、日本でマイニングを行うと大抵電気代の方が高くなってしまう。

余談3:ビットコインの開発者

 ビットコインはサトシ・ナカモトという謎の人物を中心に作られ、サトシ離脱後も数名の開発メンバーによって開発が続けられている。しかし彼らはあくまで開発者であり、ルール作りはできても運営はできない。また、自らの力でビットコインを作り出すこともできず、ビットコインが非集権型であるという秩序は保たれている。……もっとも、それはあくまでビットコインのシステムが成し得る範囲までであり、様々な政治的理由やきな臭い覇権争いがビットコイン開発周りには蔓延っている。

 

暗号通貨の強みと弱み

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暗号通貨の強み

  • 決済手段として、貨幣・紙幣は勿論、海外でも両替が必要ないという点で既存の電子マネー凌駕する。現金を持ち歩く必要はなくなり、紛失や強盗のリスクが低減する。これは店側にとっても同様*7
  • SNSでのセキュアな取引が可能*8
  • 海外との取引や大きな単位での送金時、手数料が安く手続きも単純である。
  • トランザクションが全て記録されるため、マネーロンダリングができないと言われている*9

暗号通貨の弱み

  • 基本的に集権的な管理者がいないので、通貨を紛失した際に誰も保証してくれない
  • 必ずマイニングかそれに順ずる承認作業が必要なため、送金に数十分程度の時間が掛かる。また、混雑時には更に掛かることがあり、一定ではない。*10
  • 通貨の価値が高騰した場合、個々の取引における手数料は決して安くなくなる。たとえば、BTCが 100 万円だと送金手数料は 500 円となる。これではビットコインでコーヒーを飲むことができない*11
  • 国家には依存しないが、突然政府から規制・禁止される可能性がある。*12
  • 誰でも作ることができる(後述)ので、詐欺コインや、暗号通貨を騙った詐欺が多い。
  • これは全ての通貨に共通したことだが、信用を失えば無価値になる。

 

暗号通貨の始め方

暗号通貨の持ち方

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 暗号通貨は通常、ウォレットというものに保存して扱う。その名の通り財布なのだが、前述した通り暗号通貨というのは取引の集合体であるため、実際にはウォレットは通帳のような役割を果たす。すなわち、口座番号=アドレスを保存し、望むときに別のウォレットへ送金したり、他のウォレットからの送金を受け取ったりする機能を持っている。

 送金に必要なのも相手のアドレスのみ。このアドレスは銀行口座における銀行名やら支店名やら口座番号やら名義やら全てを兼ねているのだが、それでいて個人情報を一切含まないので、Twitter などで晒しても全くプライバシー的に問題ないのが素晴らしいところだ*13。ウォレットの送金機能を使い、相手のアドレスを入力するか、アドレスを内包した QR コードを読み込んで、送金額を入力すれば終わり。極めてシンプルな手順で完了してしまう。

 ウォレットにはオンラインとオフラインの二種類があり、オフラインのものは特に強固だ*14ハードウォレットと呼ばれる電子機器を使うのが一般的だが、実は暗号通貨はアドレスとそのアドレスを利用するための秘密鍵)さえあればいいので、紙にすら印刷できる。実に不思議な世界である。

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 ところで、日本円などの法定通貨を暗号通貨に変えるにはどうしたらいいのだろうか? それには、取引所というものを使う。

取引所とは?

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 暗号通貨の取引は、取引所と呼ばれる特定のオンラインサイトで行われる。個人情報を入力して登録した後、銀行などから法定通貨を振り込む。すると取引所内に資産として振り込んだ金額が反映される。あとは好きな通貨を好きな値段で購入したり、売却したりするだけだ。非常に簡単である。

 大切な日本円が良く分からない電子データになってしまうのだから取引所の信頼度は非常に重要だが、日本は珍しくその辺の法整備が進んでいて、仮想通貨交換業の登録制度が既にできている。認可を受けている取引所(後述)を選べばとりあえずは安心だろう。

取引と販売

 bitFlyer などの取引所では取引販売が分かれていることがある。この二つの違いは明瞭で、取引はユーザ対ユーザ販売はユーザ対事業者で行われている。

 取引は他のユーザと通貨を交換しあうため、と呼ばれる独特なインターフェースがあり、初見の人は少々混乱するかもしれないが、手数料が安い。販売は事業者に対して行うため、金額と量を入力すればすぐ売買が行われるが、事業者ががっつり手数料を取っていくので、買うときは割高で、売るときは割安で売ることになる。もし、仮想通貨を短期・中期の投機目的で購入するなら、取引を使うのが一般的だ。

取引所のリスク

 暗号通貨の信頼度は極めて高いが、取引所はそうとは限らない。アカウントハックは勿論、取引所に対するハッキング、物理的な障害、最悪の場合取引所自体が閉鎖する可能性もある。Mt. Gox 事件と呼ばれるかの有名な事件では、世界最大手の取引所であった Mt. Gox がハッキングによって資金を失って破綻し、多くのユーザの資産が失われた*15。扱う額が大きくなるなら、こまめに別のウォレットやハードウォレットに資金を逃がして持っておくことをお勧めしたい。

主要な取引所

 主要な取引所を紹介する。よく、仮想通貨系儲かる!系のブログでは必ず最後に取引所のアフィリンクが貼ってあるが、その理由は取引所のアフィリエイトは報酬が非常に高額(最大数万円)だからである(仮想通貨系の適当なブログも増えるはずだ)。以下のリンクはいずれもアフィリエイトではないので安心して飛んで欲しい。

 それぞれ異なる特徴を持つので、本腰入れてトレーダーをするなら複数の取引所でアカウントを作るべきである。

  • bitFlyer:国内最大手。パチンコみたいな音が鳴る bitFlyer Lightning が特徴。ただし、ビットコイン以外の通貨は販売所しかない。本人認証が比較的早い。
  • Zaif:手数料が安く、ビットコイン以外の通貨の取引ができる所が利点。ただしサーバが弱く、通貨が暴落するとよく止まる致命的な弱点を持つ。また、登録者数の増加により本人認証に時間がかかっており、三週間近く待たされるケースも。
  • bitbank:種類は少ないがアルトコインを取引で購入できる数少ない国内取引所。送金の早い XRP が購入できるのが嬉しい。
  • Bitfinex:香港の取引所。世界有数の取引高を有し、必然的に値動きを先導する。最近 GOX する*16のではないかと言われているので、トレードは慎重に。ぼくは取引ではなく値動きのためにチェックしている。
  • Bithumb:韓国の取引所。圧倒的な取引高を誇る。これも値動きのチェックによく使う。
  • Binance:最近注目されている中国の取引所。取引高世界一。日本語に対応しており、取り扱い通貨の種類がとても多いのが特徴。一方で USD*17立てで取引できる通貨は少なめ。

 とりあえず今から始めるなら、bitbank で日本円を入金→XRPでBinanceに送金、が鉄板といえる。

 

暗号通貨の種類

ビットコインファミリー

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 ビットコイン(BTC)と、そこからフォーク(分岐)したコイン。ビットコインキャッシュ(BCH)・ビットコインゴールド(BCG)・ビットコインダイヤモンド(BCD)など。今後も続々出る模様。また、出る予定だったが延期となり幻となったB2Xというのもある。

 最古参たるビットコインの性能はほぼ限界を迎えており、コア開発者たちはとあるアップデートを提案したが、それがビットコインのコンセプトに対し破壊的であるとして一部の開発者が離反。ビットコインのそれまでのブロックチェーンを引き継ぎながら、異なるバージョンのビットコインが生まれた*18。これがビットコインキャッシュである。

 その後もビットコインの欠点を解消する様々なフォーク(分岐)が提案される一方で、本流とされていたビットコインのアップデート(B2X)は延期となり、長らく冷遇されてきたビットコインキャッシュが注目されて価格を上昇させるなど、決して一枚岩ではないのがビットコインの現状である。

熱心なビットコインキャッシュの支持者には、ビットコインキャッシュこそビットコインである、と提唱する者も居る。これは、ビットコインキャッシュが通貨としての性能に優れているだけでなく、最初の分岐騒動で実装されたビットコインの非破壊的アップデートが、ビットコインそのものを変質させてしまったとする立場である。

ビットコインは支持者が居る限り滅亡することはないが、支持者を失えば話は別である。ビットコインキャッシュにマイナーを奪われることで、最悪の場合 Flipping (基軸通貨が入れ替わること)を起こす可能性も、決してゼロではないのだ。

アルトコイン

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 ブロックチェーン技術を応用した様々なコイン。日本でも有名なものは、イーサリウム、リップルネムモナコインなど。2017年に大幅に値上がりし、100倍近くの値を付けたものもある。現在もボラティリティが高く、人気なものが多い。

 ビットコインの欠点を解消するだけでなく、独自の特性を持つものが多く、ブロックチェーンの技術基盤として通貨取引以外の契約や取引を載せて運用することを計画しているものや、企業が独自にコインを作成しサービス利用のための通貨として利用するもの、ブロックチェーンの透明性に手を加え匿名性を高めたもの、或いは 2ch 発祥のモナコイン(モナーコイン)のようにコミュニティの内輪で作っていたジョークコインが地位を得たものなど、実に多様である。また、ビットコインと違って中央集権的な(発行者が管理している)コインも存在する。

 その特性上、価格はビットコインにある程度引きずられる他、ある日突然なくなってしまうリスクもビットコインより高い。しかし、今からでも億万長者になれると言われるほど、まだ高騰の目があり夢に溢れたコイン達である。

草コイン

 暗号通貨では、イーサリウムなどの既存の通貨基盤の一部を間借りする形で*19誰でも新たなコインを作ることができる。こうしたコインは分類としてはアルトコインだが、マイナーなものは特に草コインと呼ばれる。*20

 草コインの多くは無価値で、トイレットペーパー一枚ほどの値段も付いていないものが多いが、ふとした瞬間に注目され、価値が付いてしまうことも多い。そうして草コインの価値が多くの人に認められると、取引所に取り扱われる=上場を果たすこととなる。より有名な取引所に上場するほど、通貨の価値は高まっていく。日本の登録業者が扱うほどになれば、もう草コインとは呼べないだろう。そういう通貨に草コインの頃から目をつけていれば、平気でその価格は100倍、1000倍になってしまう。

 一方で、コインが注目された、或いは意図的に注目させた上で発行者が自分の保持分を売り抜けて大儲けするための、詐欺コインも多い。たとえ1枚0.1円でも、発行者が10億枚持っていたら1億円の儲けである。果たしてつぎ込んだ金が100倍になるか、無価値になるか、絶望的なギャンブルを楽しみたい人は挑戦してみてもいい。*21

 

暗号通貨の展望

儲かるのか?

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 結局の所、暗号通貨が今注目されている主たる理由は投機である。儲かるのか? という問いに関しては、自己責任という他ない。

  • 一晩で2倍、3倍にもなるが、一方で十分の一に暴落することもある。
  • 全体的に上がり調子なので、高値掴みをしてもいつか救われるかもしれない。
  • 一方で、バブルがいつ弾けるかは分からない。来年かもしれないし、明日かもしれない。或いは、まだ始まってすらないのかもしれない。
  • 機関投資家と呼ばれる大口が殆どおらず、市場操作が(比較的)されていない。
  • 外的要因が少ないので、テクニカルは株や FX 以上に効く面もあり、一方で素人が多いのでトレンドライン等が意識されないことも多い。
  • ある日突然価値がゼロになるリスクは、何よりも高い。

 しかし、上り調子の市場というのは、儲かるか以前に楽しいものである。始める敷居はとても低いので、気になったら1万円くらいからチャレンジしてみると良いのではないだろうか。勉強にもなるし。(ただし、絶対に余剰資金で行うこと。食費を切り詰めたり、学費を継ぎ込んだり、アコム砲をしたりしてはならない)

投げ銭文化

 強みと弱みで話したとおり、暗号通貨は SNS 上でもセキュアな取引ができる。特にモナコインなどは tipmona という、リプライを飛ばすだけでモナコインを預けたり、他の人に投げたり、引き出したりするサービスが有志によって作られている。

 投げ銭文化自体は古くからあるが、専用のコインを購入したり、Paypalを介さなければならなかったりと少々面倒で、いまひとつ流行ってこなかった。が、最近は Twitch や OPENREC などで動画配信者に対してチップを投げる文化が流行りつつあることもあり、Twitter でリプライを飛ばすだけで金銭が送れるという手軽さと相俟ってまた新しい投げ銭文化を創出するかもしれない。

ブロックチェーンの未来

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 何故、暗号通貨全体の価格が上がり続けるのか。理由はシンプルで、新しいからである。何が新しいか? それは、この記事で散々説明してきたブロックチェーンシステムである。ブロックチェーンにおける暗号通貨というのはあくまでその一面でしか無い

 ブロックチェーン真価とは、そこに中央集権的なサーバが存在しなくても、情報の健全性が保証され、誰もがその情報にアクセスし、読み書きできるという所にある。今、インターネットの世界を牛耳っているのは、巨大なデータセンターを携えた Google であったり、Apple であったり、Amazon である。が、いかに巨大なサーバの森を作ろうとも、世界中に存在する個々のコンピュータの処理能力を合算したものと比べれば極僅かなものに過ぎない。ブロックチェーンは、それを(ある意味)繋げるものである。

 暗号通貨における台帳は、サービスにおいて手帳にも、掲示板にも、ネットワークにもなる。AirbnbUber、メルカリのような個人間の取引も、Googlemap や Wikipedia食べログなどの巨大な情報集合体も、サーバー無しで存在することができるようになるかもしれない。この間情熱大陸にも取り上げられていた研究者/メディアアーティストの落合陽一氏は Blockchain of Everything という言葉を提唱しているが、まさにブロックチェーンは現代のあらゆるサービスの新しい基盤になりえるものである。

 そして、暗号通貨はその大きな流れの黎明期に過ぎない。投機対象としての暗号通貨はいずれ価格を落ち着かせ、そして次のステージに進むものである。

 

 

*1:そして、多くの国でそれは幾度も崩壊している。

*2:時価総額順通貨はこちら。実に沢山の種類がある。

*3:尚、ここで「暗号通貨は~」ではなく「ビットコインは~」としたのは、深い理由がある。全ての暗号通貨は次に述べるビットコインの基幹技術を応用しているのだが、それでいて中央集権型の暗号通貨も存在するからだ。

*4:厳密に言えば、このサイトもブロックチェーン台帳の写しでしかない。台帳の唯一無二の実体というものは存在せず、100GB ほどのデータの塊のコピーが世界中、数千台の PC に保存されている。

*5:印字する名前とか、形の指定とか、そういうイメージでOK。

*6:この桁数は変動する。

*7:つまり、店員が横領したり、空き巣に遭うことがなくなる。強盗に脅されても逃げさえすればなんとかなる。

*8:詳しく知りたい人は @tipmona などを参照。

*9:実際、追跡・逮捕されている案件が多々ある。一方で匿名性を重視した暗号通貨も存在する。

*10:ただし、リップルなど高速な通貨も存在する。

*11:このジョークは、よく他のアルトコインがビットコインを揶揄するために用いられる

*12:ただし、日本においては法整備が進んでおり、今の所好意的に認められているだろう。

*13:一方で送金アドレスを1文字でも間違えてしまうと、存在しないアドレスに送金されてしまい、二度と取り出すことができない。

*14:それ自体が盗まれない限り

*15:まあ、最近はもっと面白い展開になっているのだが。

*16:破綻する

*17:厳密にはUSDT

*18:これを、ハードフォークと言う。極めて直感的ではないことだが、暗号通貨とは前述した通り取引台帳そのものなので、ビットコイン(BTC)を持っていたユーザはビットコインキャッシュ(BCH)も持っていることになり、全員に BTC と同量の BCH が付与された。

*19:つまり、ブロックチェーンに相乗りすることで

*20:恐らく、雑草の如くあちらこちらに生える(乱立する)からだ。

*21:CoinMarket など、草コインが多数上場している取引所も存在する。