ゲームを作った後に

苦労してゲームを作った!その後どうするの?というお話。

主な頒布ルート

作品を世間一般に公開し有料無料で配布することを、同人では「頒布」という。主な頒布ルートとして、以下のようなものが挙げられる。

  • イベント頒布
  • 委託販売
  • DL販売
  • ネット配布

CD/DVDの作成

作品を頒布するに当たって、イベントや委託店舗を使う場合、制作したゲーム作品をCD/DVDなどの媒体に焼く必要がある。方法は大きく分けて二つある。

  • 手焼き

自前でCD及びCDケースを購入し、自分のPCで焼く。最も単純な方法である。オプションで印刷可能なCDを買い(今はほとんどそれしかないが)自分でレーベルを印刷したり、ジャケットをプリント或いは業者に頼んで作り、ケースの表面に入れたりといったことも出来る。
そのメリットはとにかく安い。二百部作って一部も売れなかった場合でも、それほどの痛手にはならない。また、業者に頼む場合マスターアップの締め切りが一週間前くらいになるが、自前で焼く場合は前日に完成しても間に合う。時には会場でCDを焼くこともある。二回経験しました。はい。
デメリットは手間が掛かることだ。大体一日中CDを焼き続けても、300枚が限度である。単純作業なので、だんだん悟りが開けてくる。また、人的ミスによりたまに空のCDを作ってしまったりケースを壊してしまったりする。デュプリケーターと呼ばれる大量にCD焼きが出来る機械を買えばマシになるが、業者に頼んだ方が安い。

  • プレス業者(印刷所)に頼む

俗に「プレスする」という。業者に頼むと、市販のCDと寸分違わぬクオリティのものが出来る。透明のビニール包装も付いている。ジャケットは裏表あるし、冊子を封入することもできるし、オビも付けられる。
しかし相応のデメリットは存在する。まず、高い。最低でも100000円前後かかる。向こうも商売なので100枚や200枚程度(我々にとっては程度、って枚数でもないのだが)の発注を馬鹿正直に受けていては商売が成り立たない。基本的にどこの印刷所も、1000枚未満は著しく割高である。500枚作るのと1000枚作るので値段が一万円しか違わないとかザラである。しかし、1000枚頒布するのは割と難しいのでやはり躊躇してしまう。ちなみに増刷時には判が既に出来ているので安くなったりする。
そして、手焼きの項で触れたように、マスターアップの締め切り日が早い。裏を返せばイベント前日はゆったり出来るということでもあるが。

イベント頒布

出来上がった作品を頒布するもっともオーソドックスな場所がコミックマーケットなどに代表される即売会イベントでの頒布である。東方二次創作なら年に二回のコミックマーケット、そしてオンリーイベントである例大祭が主な戦場となるだろう。
しかし、作品ができた!じゃあ明日のイベントに持っていこう!というワケにはいかない。会場を押さえる都合上、イベントの申込締切は驚くほど早い。具体的に言えば、夏コミは八月、冬コミは十二月にあるが、冬コミの申込締切は夏コミ終了から二週間後とかである。あー、イベント大変だったー面白かったーなどと悠長に構えていると終わっている。
申込の方法はイベントによって違うが、コミックマーケットは専用の申込書を買う必要がある。この申込書は色んな場所で買えるが、最も簡単なのはコミックマーケットで買う方法である。夏コミでは、冬コミの申込書が売っているのだ。今はオンライン申込も出来るが、その場合でもコミックマーケットはきちんと申込書を買い中に書いてある申込番号を記入しなければいけないので、絶対に忘れずに。

  • 搬入

出来上がった作品をイベント会場に持っていくことを搬入という。基本は直接搬入、つまり重たい紙袋を二つくらい引っさげて自分で持っていく。売れ残れば帰り道もだ。車で搬入という裏技もあるが色々と手順を踏まないと行けないので割愛する。
印刷所にプレスを頼んだ場合は、場所にもよるが大抵会場に直接搬入してくれる。イベントの時期になると「○○用」とかなんとか特集が組まれてたりするので、見ると良い。搬入された荷物はスペースに直接届くので、あとはダンボールを開いて頒布するだけである。
その他、段ボール箱を事前にイベント会場に送ることも可能である。この場合はイベントによって方法が違うので申込書なりを参考にすべし。ちなみに結構締め切りは早い。会場についたら自分で荷物を回収しなければならないので、少し面倒くさい。

  • イベント後の郵送

豆知識として。頒布し切れなかったモノは手で持って帰るのも良いが、段ボール三つとかになると到底無理なので会場から直接宅配便で送ることが出来たりする(イベントにも因ると思うが、とりあえずコミケの場合)。終了間際になると、会場の外にダンボールを持った人の列が出来る。伝票を貰い、書いて、並んで、預ける。帰りは楽だ。……後日、家に大量の重たい段ボール箱が届くが。

店舗委託

恐らくご存知だと思うが、同人アイテムを専門で取り扱う店舗というものが存在する。ここに製品を委託販売してもらうことで、同人イベントに来ることが出来ない全国のユーザにも自分のゲーム作品を届けることができる。最大手としてとらのあなメロンブックスなどが挙げられる(敬称略)。
委託方法は店によってまちまちだが、今時はメールであることが多い。まず、委託したいとの旨を伝え、サンプルを送付する。その後店舗が審査し、合格すればその旨と発注数を送ってくる。それを見て何部卸すか決め、必要であれば増版し、指定された場所へと作品を配送する。
また、イベント前に作品の情報をWebにアップしていたりすると、向こうから連絡をしてくれることもある。その場合は担当の言うことに従い、発注数などを相談していけば良い。
作品の傾向にもよるが、大体イベント頒布≦店舗委託の頒布数となる。モノによってはイベント頒布の三倍、四倍が捌けたりすることもある。
ちなみに売上は直接口座に振り込まれる。可能ならば同人専用の口座を作っておくと、混乱しないので良い。

DL販売

基本的には店舗委託と同じだが、手続きが簡略化されていたり発注数云々のやり取りが無いので、大分楽である。ただしイベント頒布や店舗委託に比べるとまだまだ深く根付いていないのが実情である。

ネット配布

自分のホームページで公開する。レンタルサーバなどの借り方は説明しないが、今なら無料に拘って窮屈なサービスを使うより、少しだけお金をかけて独自ドメインを取ったり広いスペースを使えるようにしたほうが得である。少しといっても、本当に少しである。具体的には独自ドメイン取得に1000円/年、スペース取得に200〜500円/月程度で済む。ここはハクを付けるために、是非とも○○.comを取っておきたい。公開直後は転送量にも注意。あまりたくさんダウンロードされると、サーバーから文句を言われたりする。
ネット配布は基本的に無料が前提となるが、ぷちカンパなどのサービスを使って僅かながら対価を得ることもできる。性質上電子マネーを扱うので現金には(基本的に)出来ないのが難点ではあるが、モチベーションは大いに向上することだろう。

同人は儲かるのか?

同人において売上の話はタブーになっている。あくまでおひねりの延長であるにも関わらず儲けるなんてけしからん!という人が多いからだ(勿論他にも理由は沢山ある)。しかし、いつまでも煙に巻いていてはこれから始める人にとってイマイチピンと来ないと思うので、一つ架空の例を取って紹介したいと思う。
ある日突然一念発起し、六ヶ月でゲームを作り上げたとする。素晴らしい出来なので、プレス業者に頼んで1000部刷ってもらった。12万円掛かったとしよう。頒布価格を500円とし、イベントで300部頒布した。300部というのは列が形成されない程度にひっきりなしに人が来ると一時頃に丁度なくなる、といったペースである。売れ残った700部を、店舗に委託する。委託時の値段はキリが良いので700円とする。店舗の取り分は30%なので、卸値は490円となる。そして、運良く全部捌けたとする。
イベント申込費や輸送費もろもろで1万円掛かったとすると、純利益は363000円である。なんだ、結構儲かるじゃないか。ちなみに制作にかけた時間は六ヶ月×毎日平均五時間として──約900時間。純利益を時間で割ると時給よんひゃ……よし、この話はなかったことにしよう
更に言えば、1000部頒布するのはなかなか難しい。そして、毎回必ず捌けるかは分からない。似たようなバクチ打ちの話をBAK●MANとかいう漫画で聞いたことがある。

まとめ

この他にも宣伝だの広報だの動画作成だのまだまだやるべきことはあるが、とりあえず基礎的な部分はこんな感じである。オレはゲームを作るだけでいいんだよ!という人にはなかなかめんどい。しかしイベントで自分の作ったゲームを手渡しする喜びは、どんな苦労も吹っ飛ばしてくれる。普段はあまり外に作品を出さない貴方も、是非次のイベントにはちょっと参加してみたりして欲しい。
そして、打ちひしがれるといい。