何故日本の同人ゲームは海外に出ないのか

フランス人がいちばん好きなゲームは、なんとRPG! “日本のゲームでもっと遊びたい!”リポート【CEDEC 2013】 - ファミ通.com - http://www.famitsu.com/news/201308/24038892.html

という記事を受けて。
日本の同人ゲームがこういう評価を受けるのは非常に喜ばしいことだし、こちら側も是非とも卸していきたい所なのだが……。
日本の同人ゲームが海外に出ない*1『諸般の事情』の個人的見解。

英語わからん

日本人の口癖である。語学力もさることながら、翻訳を頼もうとしても誰にどう頼んでいくら払うのがいいのか分からない、ゲームの英語がどういうものか分からない、ゲームクライアントをどう英語に対応させればいいのか分からない、といった感じ。言語の壁は最も原始的で最も巨大な壁である。

ショップわからん

どこで売ればいいのか分からない。日本ならメロンかとら等の同人ショップや、DLSite.com等のDLサイトか、最近ならAmazonとかもある。一方海外は……Steamくらいしか分からない人も多いのでは。勿論探せばあるのだろうが、自分のよく知らない店でゲームが売られていく様は個人開発者としてはちょっと不安である。「他の同人ゲームも沢山売られている、海外同人ゲーム販売の金字塔」的なショップがあれば話も別だと思うが、少なくとも現時点ではSteam以外に見当たらない。
ちなみに当のSteamではSteam GreenLightという(やはり)巨大な壁が立ちはだかっている。ゲームを登録し、ユーザの投票が一定数集まればSteam入りできるというもので、日本製のゲームも数多く登録されている。どれほど通過しているかは……お察しの通りである

メリットわからん

イベントで販売したゲームはその100%が自分に返ってくる。ショップなら七割。ところが海外パブリッシャーに頼むとこのレートは途端に低くなる(まあ本来、そういうものなのだが)。
例えば、翻訳込みで広報から販売まで全部面倒見てくれる代わりに、印税程度のロイヤリティー、という形のものがある。面倒は全部こっちが見るから文句ないでしょ?というものだ。馬鹿言っちゃいけない。販路を広めたり企業を巻き込むということは相応のリスク*2を背負うわけで、単純に権利の一部を切り取って渡すだけ、というわけにはいかない。自分が法人でお抱えの窓口担当が居れば話は別だが、個人である。雀の涙ほどの報酬と天秤に掛けて、販売に踏み切れるサークルは恐らく期待できるほど居ない。

海外は遠い。

そもそも海外は遠い。コミケで直に手渡しするという史上最も近い販路を持ちながらして、海外で人気!と言われてもピンと来ない。「欲しいから作ってくれ」という声も良く貰うが……サントラの法則に照らし合わせるとどうやら信じてはいけないらしい。
個人開発者にとって、動機(モチベーション)は非常に大切である。さもなければ、誰が好き好んでこんなゲーム開発《苦行》をやるものか。しかし、大半の同人ゲー開発者は、ただ静かに平穏に、自分の好きな、自分の遊びたい、自分のためのゲームを徒然なるままに作っているのである。大半は赤字だし、大半は売り上げすら気にしないし、大半はゲームを通してユーザ達と交流することにこそ喜びを見出している。そこに「お前のブツを海の先の大陸まで持ってきてくれ!船は勝手に作れ!」と言われてもほとんどは二の足を踏むだろう(と思いきや、船を作って本当に届けに行ってしまう人もいる。人それぞれなのである)。
勿論、海外のユーザに作品を届けることは魅力的であるし、一人でも多くの人にゲームを遊んで貰いたいと思う気持ちは恐らく皆一緒だ。が、天秤のもう片方には、いつでも上に掲げた三つの「わからんThings」が重たくのしかかっているのである。
こういうのは持ちつ持たれつではあると思うが、千差万別なモチベーションを持った個人開発者をもっと積極的に旅立たせたいなら、向こうから歩み寄るのも大切である。幸運にも最近はBitSummit等の中継地点が幾つもあるため、積極的に活用していきたい。

まとめ

別に同人ゲーム開発者はゲームを海外に卸したくないわけではない。しかし、上に述べられたような「諸般の事情」を省みると……「まあ、いいや」になるのである。個人開発者の「まあ、いいや」「永遠に未定」と同義である。「すてーくほるだー」だのなんだの立ち並ぶ一企業ならそうはいかない。しかし、個人なのだ。彼/彼女の内なる心に秘められた、言語化もできないごく曖昧な判断基準の匙加減が全てなのだ。
逆に言えば、例えばSteamの担当者が目の前に来て「条件はこう、翻訳はここから選べ、配分はこう、わからないことは聞け」なんて世話を焼いてくれようものなら、一気に靡く可能性もある。勿論そこまで求めることはしないが、私たちはいつでも私たちに齎される施しを歓迎する。……たぶん。*3

*1:実際は別に出ていないわけではない。しかし、外から見れば極僅かな印象だろう

*2:分かりやすい例で言えば、サポート・海賊版・未払……おっと誰か来たようだ

*3:やっぱり、人それぞれなのである