締め切りに間に合わない時

締め切り。多くのゲームクリエーターにとっての天敵であり、生涯克服することはできないであろう宿敵。強敵と書いて「とも」と呼ぶ、なんてことはない。奴らはただ無慈悲に、我々を叩きのめすのみである。
締め切り前に一所懸命作業を行うことを(一所懸命なんて言葉では済まされないが)修羅場という。修羅場は大変なものなので、全てのクリエーターはこの修羅場に何とか突入しないで済むようなスケジューリングをしようと日々研究しているのだが、一向に回避することができない。不思議だ。
まるでWindowsムーアの法則に合わせてメモリ消費量を膨大にする故に一向に動作が快適にならないように。財布にいくらお金を入れておいても、必ず同じ期間でゼロになってしまうように。何故だか我々は、修羅場に突入するのである。一ヶ月前に作り始めようが、一年前に作り始めようが、必ず。

前置きが長かった。とにかく、締め切りに間に合わない時にどういう手段をとればよいか。ケースごとに紹介する。

ケース1. どうしようもなく間に合わない

諦めよ。そして、土下座の練習をすべし。

ケース2. あとちょっとなんだけど間に合わない

当日パッチという作戦がある。これはマスターアップ後の入稿からイベントまでにある十日間程度の時間を使って、未完成部分を穴埋めするパッチを作り、イベント当日にアップロードするというものだ。ユーザはゲームを買った後、家に帰ってパッチをダウンロード・適用してから始めるのである。
しかし、これには大きな欠点がある。ユーザはしばしばパッチを当てない。いくら当日パッチがあるからといって、CD-Rからインストールした状態で遊べないというのは危険である。
よって当日パッチの内容はあくまでバグ修正や、実装し切れなかった要素の追加(勿論メインストリーム以外)に限るべきである。メインのコンテンツが遊べないなら、ケース1を参照したほうが良い。

ケース3. 結構間に合わない

コンテンツの取捨選択が重要である。
まず、図鑑なんてものはゲームに必要ない上に追加パッチで出しても結構喜ばれるので、真っ先に取り払ってしまってよい。CPUとネット対戦なら、優先度はCPUのほうが高い。多くのプレイヤーは一人で遊ぶ。しかしネット対戦は発売直後が一番盛り上がるため、そこに設置できないのはなかなか痛い。ただし店舗委託とイベントにラグがあるなら、その間にネット対戦を根性で実装すれば何とかなるということもある。
マニュアルは、オンラインマニュアルという手段がある。マニュアル予定地のアドレスだけ書いておいたりリンクをフォルダに入れておいたりして、マスターアップの後に作るのだ。勿論オンラインというのは幾つかの弊害を招くが、他の要素と比べて大分デメリットは少ない。そもそも彼らはマニュアル見ないし。
逆に削ってはいけないものは、キーコンフィグである。マウスとパッドとキーボードの記事でも述べたように、キーコンフィグはああ見えてゲームそのものの遊ぶか遊ばないかを左右するほどの重要なものなので、煩わしくても付けた方がいい。まあ普通は開発の最初に付けるものだが。

ケース4. 徹夜しないと間に合わない

徹夜は作業時間を割り増しする悪魔の手段である。しかし、徹夜すると作業効率が目に見えたように落ちる。徹夜している本人は一所懸命なので気付かないが、大体普段の1/2くらいの効率しか出ない。
なので、徹夜する日は限るべきで、精々マスターアップ前日くらいにしか使えない。
ただし1/2というのはあくまでプログラミングの効率なので、手焼きCDを100枚耐久、とかなら二徹目でもなんとかなる。

ケース5. 間に合うかどうか良く分からない

マイルストーンを立てることをオススメする。マイルストーンというのはいわゆる予定表のことで、日付とやるべきことでガントチャートを作り、此処から此処までの期間に何をやる、というのを書くのである。ググるとそれっぽいのが出てくる。
賢い人なら察しが付くだろうが、当然のように予定通りにはいかない。しかし、マイルストーンを作っているとどれほど遅れているのか把握することができるのだ。
通常ならここまで終わっているはずなのに、終わっていない。それを軸に、マスターアップにどこまで終わらせることが出来るか考える。そして頭を抱えてケース1〜3のどれかを実行するのだ。

ケース6. 体験版である

同人ゲーム界隈では体験版に対してとても優しい。評価に0未満が付きにくいのだ。ゲームとして体裁が整っていなくても、100円なら「まあ体験版だし」と許してくれる。
それに頼りすぎるのは危険だ。が、どうしようもない修羅場の場合せめてゲームとしての体裁を整えたなら笑って許してくれるかもしれない。
まあ、大抵どうしようもない修羅場が一度だけなはずはないのだが。

ケース7. 四日後の例大祭に間に合いそうにない。

残念ながらここまでこの記事を読んでしまった時点で手遅れだ。ちなみに自分もこのケース7である。どうしようもない。

ケース8. 天災を祈る(2011/6/19追記)

不謹慎なのでやめよう。でも、筆者はケース7を記述して二日後に東日本大震災が来ることとなったのだった。

まとめ

つまるところ、根本的な解決方法なんてないので頑張れ、ということになる。しかし大抵の場合間に合わないという焦燥感は修羅場になって初めて味わうので、マイルストーンを書いてない人は書くようにすれば多少マシになると思われる。
それでは、健闘を祈る。